「FATHER」で話題になったカニエ・ウェスト(Ye)の11作目アルバム「Bully」。その収録曲のひとつ「BEAUTY AND THE BEAST」も、静かながら深い意味を持つ一曲として海外メディアで注目されている。本記事ではその制作背景とテーマを、公式インタビューや海外メディアの報道をもとに解説する。
「BEAUTY AND THE BEAST」とは
「BEAUTY AND THE BEAST」は、カニエ・ウェストがアルバム「Bully」のために制作した楽曲。2024年9月、中国・海口で行われたライブでアルバムと共に初披露され、2025年2月にはYeezy公式サイトでプロモーショナル・シングルとして先行配信、同年6月には「Preacher Man」「Damn」と共に3曲入りEPとして正式にストリーミング解禁された。
制作は東京のホテルの一室で
この曲がとりわけ興味深いのは、その制作背景だ。原型は2021年、アルバム「Donda」制作時期に遡るとされるが、カニエは2024年から2025年にかけて滞在した東京のホテルの一室でこの曲を作り直したと報じられている。音楽ジャーナリストのTouré氏によれば、カニエはあえて中国ツアーの日程を東京滞在に合わせて組んでいたという。「東京にいる間は、彼は自分がなりたい自分でいられる」と、Touré氏はこの時期を彼にとっての”新しい章”だったと語っている。
歌詞のテーマ|”やり直し”と葛藤
「BEAUTY AND THE BEAST」は、カニエの過去作「VULTURES」シリーズ以降のキャリアや心境を振り返る、内省的な一曲だ。サビでは、ファンの期待と自分自身の感情をコントロールしようとする葛藤が歌われる。
サビの”Think about it every night and day”(毎晚毎日、そのことを考えている)というラインからは、ファンを意識し続ける重圧が溲む。また、”Fresh new tires, I’m still running”(新しいタイヤに履き替えて、まだ走り続けている)という一節は、キャリアの再出発を象征する表現として海外メディアでも取り上げられている。
サウンドの特徴|ラップではなく”歌う”カニエ
音楽的には、カニエの過去作の多くがラップ主体だったのに対し、「BEAUTY AND THE BEAST」は全編を通して”歌う”スタイルで作られている。R&Bグループ「The Mad Lads」の楽曲「Don’t Have to Shop Around」をサンプリングし、Ensoniq ASR-10やSP-1200といった往年の機材を使用することで、初期カニエ作品を彷彿とさせるチップマンク・ソウル調のサウンドに仕上がっている。テンポは落ち着いた”ダウンテンポ”で、Vultures期の攻撃的なサウンドとは対照的な、静かで内省的な雰囲気が特徴だ。
スーパーボウルでの”因縁”のリリース
「BEAUTY AND THE BEAST」が単独シングルとして初配信されたのは、2025年2月のスーパーボウルLIXハーフタイムショー当日。奇しくもこの回のハーフタイムショーを務めたのはケンドリック・ラマーで、複数メディアはこのタイミングでのリリースを「カニエの対抗心の表れ」と分析した。
批評家の評価
Vibe誌のArmon Sadler氏は、Vultures期からの脱却として「カニエがより脆さを見せるためのキャンバス」と評価。Complex誌のMiki Hellerbach氏も「カニエの歌詞がここ最近で最も瞑想的」と評しており、”主張”よりも”内省”に重きを置いた作品として受け止められている。
まとめ|「BEAUTY AND THE BEAST」が示すもの
「BEAUTY AND THE BEAST」は、炎上と復帰を繰り返してきたカニエ・ウェストが、東京という異国の地で見せた、静かな”素顏”のような一曲だ。「FATHER」が神との対話や復活をテーマにした重厚な楽曲だったのに対し、「BEAUTY AND THE BEAST」はより個人的で、ファンとの関係性やキャリアへの迷いを率直に綴った内容になっている。アルバム「Bully」の他の収録曲についても、今後逐次この記事群で取り上げていく予定だ。
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